殉死
発表年: | 1967年(司馬さんの年齢:44歳) |
発表媒体: | ??? |
本の出版社: | 文芸春秋 |
主人公: | 乃木希典 |
殉死は、小説ではなく、司馬さんのとらえている乃木希典像を文章にしたものです。
乃木希典は、日露戦争の旅順攻略した将軍で、戦前では英雄でした。
しかし、司馬さんは、大量の文献を調べて、乃木希典を無能な将軍としています。
これは、「坂の上の雲」を読んでいただけるとおわかりになると思います。
この本では、乃木将軍の生い立ちから、若い頃の話、旅順攻略線、殉死の状況などを書いています。
(乃木将軍は、明治天皇が崩御されると、殉死をしています。)
戦前の日本では乃木将軍批判は許されないでしょう。
乃木将軍は戦前の日本では神聖視されていました。
予断ですが、司馬さんは太平洋戦争当時の軍部を嫌いぬいていました。
これは、司馬さん自ら戦車部隊に属していましたが、当時の軍部(主に陸軍だと思いますが)の
無為無策と責任がわからなくなるシステムに翻弄されました。あまつさえ、民間人の膨大な戦死者を残して敗戦を迎えました。
司馬さん自ら、敗戦と向き合った結果、日本は、このような国ではないはずだという意識が強烈に
芽生えたといいます。この意識があるために、司馬さんの各小説の主人公は、日本がよい方向へいく時の小説が多いと思われます。この殉死の主人公である乃木希典は、司馬さんの嫌いな昭和軍部が神聖視した人物ということになります。