世に棲む日々
発表年: | 1969〜1970年(司馬さんの年齢:46歳〜47歳) |
発表媒体: | 週刊朝日 |
本の出版社: | 新潮社 |
主人公: | 吉田松陰、高杉晋作 |
この小説は、前半で吉田松陰を、後半で高杉晋作を取り扱っています。
吉田松陰は、長州きっての秀才で、将来の栄達を約束されていました。
しかし、黒船騒ぎで、佐久間象山の門下になり、当時の西洋列強の脅威を知り、外国に密航しようとしますが、
失敗して獄に入れられた後に刑死します。獄から出て、安政の大獄によって、刑死するまでのわずかな間に松下村塾で門弟に教えました。この門弟たちから維新の英傑たちが出てきます。その中に高杉晋作もいます。
吉田松陰前は、長州は普通の藩でした、時代ということもありますが、吉田松陰のもつ人格的パワーを
司馬さんの捕らえた感想で書かれています。
又、吉田松陰というと尊王攘夷をとなえたとして有名ですが、ただの攘夷でない証明として、外国に密航しようとしたことです。当時の知識人では、開国して国を富まして外国に当たるというのがありました。
その説を一番唱えていたのは、師の佐久間象山です。このようなことから単純な攘夷ではない思想もかかれています。
後半は高杉晋作が主人公です。高杉晋作は、革命戦争の英雄ともいうべき人で、長州征伐によって
討幕派が弾圧されたときに、機を見てクーデターを起こして、討幕派が実権をにぎるようにしました。
惜しくも、維新前に28歳で肺結核でなくなります。時世の句は、「おもしろきなき世をおもしろく〜」と
有名な句を残しました。
この小説は、後半の高杉晋作の活躍ぶりが印象に残って、高杉晋作だけが主人公のような錯覚をもちます。
高杉の豪快な生き方は、必見です。